電話占い速報編集部(以下、占速) X氏は電話占い業界にお詳しいそうですが、電話占いにはどのような形で関わってきたのでしょうか。

X氏 私が電話占いというサービスに携わるようになって、かれこれ6年ほどになります。某電話占い会社でマーケティングや広告の担当をしていました。利用者にアンケートをとったり、グループインタビューを行ったり、市場のニーズをいかに反映したサービスを提供するかという課題に取り組む仕事をしていました。

占速 現在もその会社にいらっしゃるのですか。

X氏 昨年の暮れに電話占い業界から引退して今は家業を継いでいます。私が勤めていた電話占い会社が無くなってしまいましたからね。

占速 勤め先の電話占いがなくなってしまったのですか。

X氏 正確には無くなってしまったというわけではないです。ブランドが変わって形が変わって残っていますが……これ以上お話しすると身元がバレてしまいますので(笑)。

占速 狭い業界ですから、たしかにだいたい察しがついてしまいますね(笑)。それでは本題に入りますが、「無料の電話占い」というものは存在するのでしょうか。

X氏 無料の電話占いをどのように定義するかにもよります。最近では、インターネット上のウェブサイトで、四柱推命や姓名判断、タロットカードや西洋占星術など、本格的な占いが無料で体験できますよね。それらと同じ感覚で、完全に無料で楽しめる電話占いというものは現在までに聞いたことがありませんし、実現するのは難しいと思います。

占速 定義のしかたによっては無料の電話占いと言えるものが存在するということでしょうか。

X氏 ええ、初めて利用をする人に限定して、最初の20分間は無料で鑑定ができる、というキャンペーンを見たことがあります。去年でしたか、電話占い業界に大手資本が参入してきた時、新規会員にハズレ無しの抽選で5分～20分ほど無料で鑑定ができるというキャンペーンを打ち出していました。こういったキャンペーンを含めれば一時的に無料の電話占いが存在すると言えなくもありませんね。もちろん、多くの方が「無料の電話占い」と聞いて思い浮かべるものとは大きな隔たりがありますが……。

占速 N社の話ですよね。そういえばそんなキャンペーンをやっていた記憶があります。そういった一時的なキャンペーン以外には、無料の電話占いというものは聞いたことありませんか。

X氏 キャンペーン以外では聞いたことがありませんね。後で詳しくお話ししようと思いますが、電話占いのコスト構造から考えると無料にすることは非常に困難なのです。ただ、一部の電話占い業者が「実質、無料」と謳う誇大広告を出していたりしますね。前払いポイントを5万円分購入すれば、1万円分を割り引くとして、この1万円の割引を「1万円分無料で鑑定！」と言ってたりします。強引な詭弁ですから、「無料の電話占い」という言葉に安易に飛びついて騙される人が出てこないことを祈りたいですね。

占速 割り引いた金額を1分あたりの金額で割って、何分間無料鑑定と言う広告は見たことがあります。我々もそういった前払いポイントの購入に関するトラブルは良く聞いていまして、電話占い速報でも「前払いポイントの電話占いには注意しましょう」と啓蒙活動に勤しんでいますよ。

X氏 前払いポイントの制度が完全に悪だとは言いませんが、大量に購入すると安くなる価格設定や、お試し利用ができない仕組みなど、利用者をカモにするような使い方がされているのが実情ですね。毎週使う人ならともかくとして、普通の人はポイントを余らせてしまうのがオチです。もちろん業者側はそれが狙いで、「釣った魚に餌はやらない」ビジネスモデルと言えます(笑)。

占速 そうすると、やはり誰もが期待するような、条件無しの無料の電話占いというサービスは難しいのでしょうか。

X氏 電話占いでは、個人の占い師がやっている所を除いて、基本的に1分でも鑑定すれば占い師側に取り分が発生するのですよ。それから鑑定中も電話の通話料金が刻一刻と増えていきますから、ウェブサイト上の無料占いと違ってランニングコストが非常に高いわけです。これを無料で提供するとなると、相当の赤字を覚悟しないと難しいと思います。例えば占い師側も取り分なしでも納得するような仕組みが構築できるとか、通信技術が発達して通信コストが0になるとか、何らかのパラダイムシフトが起こらない限りは難しいと思います。

占速 なるほど、安く見積もっても10分で500円以上のコストがかかりますね。これを無料で提供すれば500円をばら撒くような話ですから大赤字は間違いないです。

X氏 そうです、さらにそのばら撒いた500円をどのように回収するかも重要です。10人に1人が5000円の利益を落としてくれなければビジネスとしては成り立ちませんからね。

占速 数字を見ると、ウェブサイト上の無料占いと違って、コストが発生する関係で無料にはなりそうもないですね。

X氏 そうは言っても完全に不可能というわけではありませんよ。数年前までは電話占いの鑑定中の通話料金は利用者側の負担が原則だったのです。そのためにわざわざコレクトコールで占い師から利用者に電話がかかってくる仕組みが一般的だったわけですから。ところが去年の夏ごろ、Kという電話占いがその常識をひっくり返して、鑑定中も利用できるフリーダイヤルを導入して業界に激震が走りました。もしかすると常識を覆す無料の電話占いが登場するかもしれません。

占速 ぜひ常識を打ち破って無料の電話占いを作ってもらいたいですね。K社のフリーダイヤル導入は、通話料金が無料になったという点で、無料の電話占いに一歩近づいたと言えるかもしれません。K社のフリーダイヤルは業界にとってはどのような影響を与えたのでしょうか。

X氏 私が勤めていた電話占い会社でも、フリーダイヤルの導入を検討したのですが、フリーダイヤルを入れてしまうと赤字になるということで導入を見送った経緯があります。フリーダイヤルというのはかける側に代わって受ける側が通話料金を負担するわけですから、長時間の通話が当たり前の電話占いでは、負担するコストも膨大になるのです。特に携帯電話などでは、3分間で120円～140円程度の負担になります。

占速 ざっと計算すると30分の鑑定で1200円～1400円の負担ということですね。それに問い合わせなど事務的な通話時間も含めると2000円くらいになるでしょうか。鑑定料金から考えると確かに高いコストがかかっているのですね。

X氏 それに問い合わせをしたものの、結局は鑑定をしなかった利用者のコストも発生します。電話受付の応対が良くて、魅力的な占い師が揃っているなど、電話をかけて来た人のほとんどが鑑定を利用することを前提としても採算的が合わなくなるリスクが高いのです。

占速 それでも最近ではK社に追随するように多くの電話占い会社がフリーダイヤルを導入しています。これらの会社はコスト負担をどのように乗り切っているのでしょうか。

X氏 地道なコスト削減をする以外に近道はないですね。通話料が若干安いIP電話を入れてみたり、遠距離通話を減らすために近隣の地域に集中して広告活動をしたりして、なんとか赤字にならないように努力しているのだと思います。私が勤めていた電話占い会社では結局導入できませんでしたから、フリーダイヤルを導入した会社は企業努力を積み重ねていたんだと思いますよ。

占速 フリーダイヤルの導入というのは思っていた以上にハードルが高いものなんですね。実はフリーダイヤルの番号を掲載しているのに、鑑定の際には別の番号やコレクトコールを使わなければいけないという詐欺のような電話占いがあるんですよ。企業努力を放棄して、表面上だけ真似をしているわけですね。

X氏 問い合わせの電話だけフリーダイヤルにする電話占いがあるのですか。鑑定の時には通話時間が長くなりますから、その通話料金を負担したくないという気持ちはわからないでもないですね(笑)。しかし利用者側からすれば鑑定中の通話料金がかからないことが魅力なわけですから、そんな電話占いは1度使えばもう2度と使わなくなると思いますよ。

占速 意外に電話占い会社は企業努力をしているものだということが良くわかりました。この調子で完全に無料の電話占いが登場するといいですね。

X氏 最近の電話占い業界は競争が激しいので、それだけ企業努力をしないと生き残れないわけです。そのうち本当に無料の電話占いが登場してもおかしくないと思います。

占速 本日はありがとうございました。